高蔵寺駅南口広場
竣工 | 2023.3
規模 |敷地面積3,100m2
住所 | 愛知県春日井市高蔵寺町4丁目
用途|駅前広場
内容 |ランドスケープ
基本設計
実施設計
施工監理
施主 | 春日井市
施工|-
撮影|SfG(大野)
リ・ニュータウンとしての駅前再整備
高蔵寺駅は高蔵寺ニュータウン南部に位置し、1日平均約5万人の乗降客が利用する駅であり、周辺には総合病院や公共施設が立地している。近年では、一般車の混雑といった交通課題や、滞留空間へのニーズの高まりなどが顕在化。加えてニュータウンや周辺地域では定住人口の減少がみられる。市の駅周辺再整備を契機とした高蔵寺まちづくりによる取り組みによって通過するだけの場所から、アクティビティ豊かな滞在空間としての玄関口を目指す。まちなかに人が滞留し、駅前広場及び駅前空間の新たな活用に向けた事業として、「高蔵寺駅南口駅前広場改修」や「地下道改修」について、高蔵寺駅周辺デザインチームを発足し、ハードとソフト両面からの再整備をおこなった。
地名や地形から生まれたデザイン
高蔵寺ニュータウンは三方を山とか川に囲まれており、地名には「藤山台」や「中央台」など、”台形”が由来した名が多く残る。地下道天井の吊り下げサインや、天井材の形状には台形を模したモチーフを取り入れた。
また高蔵寺や周辺地域産(高森山や高座山、保安林など)の材料で構成された植栽帯には、ついついのぞき込みたくなるような形状の立体的なサインを設置。何気ないコンクリートの洗い出し舗装には、近隣で産出されるチャート石を用い地域独自の空間を模索した。
土木×インテリアでつくるヒューマンスケールな駅前広場
場所によって形状のちがう杉材のベンチを設置し、やわらかく照らすスタンドライト形状のあかりによって、待ち合わせだけでなくほっと一息つける家のようにくつろげる空間を演出。
透過性の高い素材や、アルミルーバーの屋根材にすることで、シェルター下に積極的に光を取り込み明るく開放的な空間に。屋外ファニチャーと、ロータリーを取り囲む屋根面にライン照明を施し、線的に明るい印象を生み、夜間でも安心して利用できる照明計画をおこなった。
まちの遺伝子を知る植栽計画
高木はすべてニュータウンで密生した樹林から移植することで、暗くなりすぎていた森に光を取り入れるなどの環境改善を図り、周辺緑地の整備にも寄与。市域内移植することで、材料輸送時のCO2排出量を考慮した。
周辺の保存林から林床移植と併せてタネの採集をおこなう。2年間かけて育苗をおこない、地域住人たちと植栽ワークショップで植え付けをおこなうことで、高蔵寺ならではのみどりの整備を実現。駅前に高蔵寺のちいさな植物園をめざした。
植栽帯には、樹名だけでなく産地も記載するサインを設置することで、市民に広く親しみを持ってもらう工夫をおこなった。
竣工しても育て続けるスローな取り組み
「駅広育て部」は、月に1度地元学生団体を中心に、駅前広場のベンチや舗装面の清掃活動、植栽の維持管理をおこなう。現在では、地元の「高森山フォレストサポート部」と連携し、市民と楽しみながら植栽を育てる部活動を展開。
タクシー乗り場や屋外空間を活用した実証実験「KOZOJI PLAT」を継続しながら、官民連携のマネジメント手法を確立。駅前広場で過ごす時間に選択肢を増やす新たな居場所としての活用を模索をおこなう。
改修完了後に、設計における考え方を市民にひろく伝えるためのデザインブック「駅であいましょう1」・「駅であいましょう2」を制作。
WEBサイト上や市民コーナーで公開をおこなっている。