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天護山 妙祐寺

竣工|2021.07
規模|約140m2
住所|東京都世田谷区
内容|墓園
施主|妙祐寺

​施工|オイコス庭園計画研究所

写真|高山一平

 世田谷区烏山・妙祐寺の庭に、灯籠をイメージした3種類の細長い墓石を並べた露地庭を計画した。庭は既存樹を活かしながら武蔵野に昔から生える草花を新たに植え込み、豊かな庭として再整備した。経年変化する金属や石の加工など墓石自体も繊細な表情を出すことで、移ろいの中で故人を思いながら巡ることができる墓苑となることを期待している。

 墓石の前で手を合わせる場所というのは、一体誰のための場であったでしょうか。

大切なひとをなくした悲しみを受け入れるために日常の喧騒から離れ、故人を思うことが許される場所はそう多くはない。残されたひとが前を向いて明日を生きてゆくために、墓地は今の時代にも変わらず求められている。しかし、墓参りにいく習慣も薄れ、これからますます墓苑のあり方が問われてきている。そのような中でこのプロジェクトを通して、墓石だけではなく、まちなかにある墓苑のあり方を模索した。

それは「お参り」という儀礼だけでなく、「お参りにいくまでの空間全体の体験」を捉え直すことが重要であると考えたからである。その上で、この「墓苑」に適した墓石のありようとは、庭にすえられた庭石ようであることと考えた。

墓石をこの庭に合わせて見直し、全体で一体の景観となるように統合させ、露地庭としてゆっくり歩いて巡れる空間を目指した。

​ 墓石に限らず、日本で石の加工や施工に造詣の深い職人は、近年減少している。

「あられこぼし」と呼ばれ桂離宮にも施された仕上げは、特殊な川石と高い技術力が必要とされるために近年では実現が難しい。この墓苑の園路の「石敷」には、実際に京都で修行を積んだ職人を筆頭に、若く経験の浅い職人達にも参加してもらい、「あられこぼし」に近い仕上げを安価で入手しやすい一般砕石を使い実現させた。舗装に適した形状のものを選別しながらの作業のため、手間はかかるもののこれまでにない石敷になった。また墓石についても、1つの石に多様な加工が実現できたのも、デザイナーが石工の加工場へ足繁く通うことで、そこに並ぶ研磨機や職人の手捌きなど、忘れ去られていた技術を再発見したことがきっかけにある。このように、日本の伝統技術を今の時代に読みかえ取り入れやすい形に再編することで、日本の職人が持つ技術の継承のきっかけのひとつになればと考えた。

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